不動産業者だけが閲覧できる日本最大の物件情報サービス「レインズ」をご存知?

 

「定年後は田舎に移り住むので住んでいるマンションを売却したい!」

「バブルの時に購入した投資マンションをもう売ってしまいたい!」

 

古今東西、居住用にせよ、投資用にせよ「マンションを売却したい」というニーズは常に溢れています。一方、個々人に焦点を充ててみると、(専業の不動産投資家は別ですが)不動産の売却というのは一生にそう何度もある場面ではありませんよね?そもそも「一生に一度の買い物」のつもりで買われた方も多いのではないでしょうか?

 

経験のないマンション売却。どのように行えばいいのか、誰に何を頼めばいいのか、悪意のある業者に不当に利益を持っていかれないか。尽きない不安を解決してくれるのがレインズ(REINS)です。今回は、レインズの仕組みや、その成り立ち、利用するメリットについて、徹底解説していきます。

 

マンションの売却を検討されている方、悩まれている方は参考にしてみてください。

1.レインズとは?

 

レインズとは、不動産会社同士がリアルタイムで不動産の売買情報の交換を行えるオンラインのシステムのことです。”Real Estate Information Network System”のイニシャルをとりREINS(レインズ)と名付けられました。国土交通大臣から指定を受けた、4つの「不動産流通機構」と呼ばれる組織(東日本不動産流通機構、中部圏不動産流通機構、近畿圏不動産流通機構、西日本不動産流通機構)がそれぞれのシステムを運用しています。先ほど、「不動産会社同士」と書きましたが、正確にはこのレインズの会員である不動産会社同士が、このシステム上で情報交換ができるようになっています。基本的には、不動産の売買に携わっている不動産会社はレインズの会員としての登録がされており、それぞれの不動産業者は所属するエリアのいずれか4つのレインズのうちの1つの会員になります。どこの会員となっても、全てのシステムにアクセスすることができます。

 

レインズのシステムは、「買い手が、最新の不動産情報にアクセスしながら欲しい物件を選べるように」「売り手の売却のお手伝いを不動産業界全体で行えるように」といった理念の実現のため、平成2年に誕生しました。誕生当初はインターネットが普及する以前の時代だったため、情報の登録、入手ともにFAXを使った情報交換が中心ですが、インターネットの普及により、必要な情報を簡単に、かつピンポイントに入手できるようになりました。会員の種類としてはインターネットを利用する「IP型」とかつてはFAXを使って情報をやり取りする「F型」という会員の種類があります。かつては、マークシートを使ってFAXを用いて物件情報を登録なども行えていたのですが、現在はFAXを使うF型では情報を受信することしかできません。従って単独ではレインズを活用するのは現実的ではありません。現在はインターネットのみで利用する「IP型」と、FAXを併用する(情報の受信手段として利用する)「IPF型」の会員のどちらかが主流になっています。

 

2.レインズではどんな情報を集めることができるの?

 

レインズの会員はシステム上で下記のような情報をみることができます。

・レインズに登録している他の会員(業者)の情報(所在地、利用実績など)

・売却を検討されている物件の情報(所在地、図面など)

・過去5年間の取引事例

こういった情報を一元的に検索できることで、条件にあった物件を探すことができるというだけでなく、近隣の物件や、似たような条件の物件の現在の価格感や、過去の成約事例といった比較対象を見ながら、その価格が適正かどうかといった部分も、併せて確認することができます。

 

3.レインズは誰でも見ることができるの?

 

先ほどの項目でも少し触れましたが、レインズの情報にアクセスすることができるのはいずれかのレインズに会員登録している不動産業者のみです。買い手は自分でレインズの情報にアクセスすることは出来ないので、買いたい物件の情報を業者に伝え、代行して情報を入手してもらうことになります。ただし、公益財団法人不動産流通推進センターが運営する「不動産ジャパン」というインターネットサイトを通じてレインズに掲載されているものと同等の情報を得ることはできます。

 

4.全ての不動産の情報がレインズに流れているの?

 

結論から言うと、多くの不動産の情報がレインズに流れていますが、全てが全てではありません。

不動産を売りたい場合、大半のケースでは「宅地建物取引業」の資格を所有する不動産会社に依頼がなされます。この「依頼」を一般に「媒介」というのですが、媒介の契約には

  • 専属専任媒介契約(依頼するのは1社だけ。自分で買主をみつけることも不可能)
  • 専任媒介契約(依頼するのは一社だけ。ただし、自分で買主を見つけることも可能)
  • 一般媒介契約(複数の業者に依頼することができる。自分で買主を探すこともできる。)

3つが存在します。このうち、③の一般媒介契約のケースのみ、レインズへの登録義務がありません。したがって、売主としての立場から見ると、一般媒介契約の場合のみ、業者がレインズに登録しない可能性を考慮しなければならないということです。レインズに登録されないということは、全国の「不動産を買いたい」と思っている買い手に情報が届かないということを意味します。レインズに登録などしなくても、良い買主を見つけてくることができる、ということであればよいのですが、恣意的な取引が起きるリスクもあります。

 

5.恣意的な取引ができるとどんなリスクがあるの?

 

あってはならない話ですが、悪いケースとして、「理屈の上では可能」ということを念頭に置くくらいのつもりで読んでみてください。

レインズに登録せず、業者が独自のコネクションだけで買い手を探す、となると、その不動産の情報はレインズのシステムの中でたくさん流れている他の物件情報と相場が比較されることがありません。つまり、相場とかけ離れた金額での売買が成立する可能性もあるのです。

たとえば、売り手が依頼した業者が買い手側と共謀して、不当に安い金額で売買を成立させるようなこともできてしまいます。その上で、浮かすことのできた金額の中から一部のキックバックを受け取る、ということが理屈の上では可能になってしまうのです。

過度に警戒する必要はありませんが、動く金額が大きく、しかも素人からすると相場がつかみづらいのが不動産の世界です。専門的な部分までご自身で勉強する必要はありませんが、基本的な構造くらいは把握しておけば、悪意ある業者に足元を見られる可能性も減らすことができます。

 

6.レインズを利用するメリット

 

以上の前提を踏まえて、改めて各登場人物にとってのレインズを利用するメリットについてまとめてみます。

 

・売り手側にとってのメリット

 

  • 媒介を依頼した不動産会社や自身のコネクションだけで買い手を探すことに比べて、全国の買い手候補に対して「こんな物件を売りたい!」という情報を告知することができます。
  • 買い手は公開されているたくさんの不動産情報を比較検討しながら買いたい不動産を探すため、媒介する業者が買い手を探すプロセスにおいて、手を抜いたり、相場からかけ離れた価格を設定するといった不正行為を働く可能性を抑えることができます。

 

・買い手側にとってのメリット

 

  • 不動産を買いたいと思ったとき、自分の足を使って売り手を探し回るよりも、業者に依頼することにより、条件に合致した候補を全国の登録されている情報の中から探し当てることができます。
  • 登録されている沢山の売却希望情報や、過去の成約情報を比較検討しながら物件を検討できるため、不当に割高な条件で物件を掴まされるリスクを軽減する頃ができます。

 

このように、売り手、買い手にとって、それぞれ「公正」かつ「大規模」な市場のもとで取引を行うことができる、というのが、双方にとってのレインズを利用するメリットになります。

 

7.レインズを使ってマンションの売却が完了するまでの流れ

 

具体的に、レインズの利用をイメージしてもらいやすくするために、具体的なケースを想定してみましょう。

福岡県に住むAさんは、引っ越しのために持っているマンションを売却しようと考え、仲のいい地元の不動産業者B社に媒介を依頼します。Aさんはまったくの素人なので、自分で買主を探してくることは考えず、「専属専任媒介契約」を結びます。この契約を結んだ以上、B社はAさんの物件を登録する義務が生じます。(ちなみに、専任専属媒介契約の場合、原則5営業日以内です。)B社は福岡にあるので「西日本レインズ」の会員です。登録が西日本レインズであっても、4つのいずれかのレインズの会員である不動産業者は、登録されたAさんの物件の情報を見ることができます。ここで、福岡に不動産投資のためにマンションの購入を検討しているCさん(東京都在住)から物件を探してほしいと依頼を受けたD社(東日本レインズ会員)は福岡県の中で、Cさんの要望に合った物件をいくつかピックアップすることができます。いくつかの候補の中に、Aさんが売りたいマンションの情報が出てきました。Cさんに候補を示したところ、Aさんの物件に特に強い興味を持たれている模様。しかし希望の売却金額を見ると、周辺の物件や、過去の取引事例と比較しても、少し割高なようにも見えます。そこで媒介しているB社に対して交渉をかけ、100万円割り引いてくれるならば即決する」といった条件を提示します。B社はAさんにその状況を報告しました。するとAさんは「100万円はちょっともったいないが、買い手がつくのか不安だったので、その条件で確実に契約してくれるのであればOKだ」とその条件を承諾します。

こうして、Aさんは「買い手がつくのか」と不安でしたが、100万円の値引きとひきかえに、すぐに買い手をつけることができましたし、Cさんは条件のよい物件をさらに100万円の値引きの好条件で買うことができました。このように、レインズが機能することによって、福岡と東京という、自分たちの足で探していては中々出会うことができない者どうしで、お互いに良い取引をつくることができました。

 

まとめ

 

レインズは全国の不動産会社が協力してつくられた、歴史あるシステムです。レインズを有効活用することにより不動産の売却という、一生にそう何度もない、高額なのに経験は少ないという不安な不動の取引がスムーズ、かつ、公平に取引を行うことができるようになります。マンションの売却を検討されている方であれば、ぜひ活用してみましょう!詳細までは分からなくとも構造を知っているだけで、業者に足元を見られることはなくなります。

 

参考にしたページ:不動産テックラボ – 不動産×ITに特化したメディア